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* 第十六話 * ~麻弥子の場合~ ?

ところが、おかしなことになった。


通勤途中、駅の購買でスポーツ誌の一面に里実の目は釘付けになった。


【活動停止!?】の文字が躍る。


思わず、里実は新聞を手にとった。


「…なんで?」


そこには、例のバンドが突然の活動停止と書かれていた。


メンバーの海外留学が主な理由で、その期間が終わるまで、このバンドとしての音楽活動はお休みするということだった。


将来の海外デビューを視野に入れての、前向きなものとなっていたが、里実の心はひっかかった。


偶然だったらいい。


だけど、もし里実の不用意な電話のせいだったとしたら。


麻弥子だけが彼らの犠牲になるのだろうか。


確定ではない、これは想像なんだと里実は自分に言い聞かせながら、もう一度麻弥子の拘留先に行こうと思った。








麻弥子は先日とは打って変わって少し明るい表情だった。


「里実、ありがとう。実は昨日、久々に家族と会ったのよ」


親御さんと顔を合わせて、精神的に救われたものがあったのかもしれない。


「そう、元気そうでよかった。ちゃんと食べてる?」


「うん、食べてるし。疑いも晴れそうで、あと何週間かで出られると思う」


麻弥子が他と通じているという裏は取れないようだ。


里実は、ホッと息をついた。


「あの、ほら、麻弥子の好きだったあのバンド、あるじゃん?」


極力、周囲に怪しまれないように、ごく世間話の体で、里実は切り出した。


「解散はしないけど、活動停止だってよ?今朝のスポーツ新聞に出てた」


「え?」


麻弥子の顔色が変わって、またすぐに戻った。


「ギターの人が海外行くんだって」


この一瞬の間で頭の中で何かを整理したような感じだった。


表情の切り替えは素早く、見事としか言いようがなかった。


「そう、ここにいるとそんな話も全然分からなくて…。ファン失格だわね」


自嘲気味にそう応えると、立ち上がる。


「もう行くね。それを伝えに来てくれたんでしょ?」


里実に背を向けた。


「麻弥子」


「ん?」


振り返った麻弥子の表情は不思議と晴れ晴れとしていた。


「あ、里実、もうこんなとこ来てくれなくていいからね」


麻弥子が優しい声で厳しい言葉を放った。


里実はこの場で切り捨てられたと感じた。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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