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* 第十四話 * ~橙子の場合~ ?

「やだ、貴昭、中で出しちゃったの?」


「ごめん、タイミングが…」


橙子は枕元からティッシュを何枚か取り、貴昭に渡すと、自分も股から液体を拭き取った。


「ま、大丈夫よ。危険日ではないはずだから」


橙子はそう言ってゴミ箱に丸めたティッシュを捨てた。


貴昭はギュッと橙子を抱きしめた。


胸が高鳴る。


貴昭を愛しているとしみじみ感じた。


こういうひと時がこのまま止まってしまえばいいと思う。


今の射精で、いっそのこと受精してしまったら、貴昭はずっと橙子のそばにいてくれるのだろうか。


急に独占欲が電流のように身体を駆け巡り、結婚したいと思った。


貴昭と結婚出来るのなら、女優としての成功なんて要らない。


「ねえ、もしも妊娠したら、どうする?」


「…困るね」


「まあ、無責任なこと」


「逃げる…かな、多分」


悪い冗談だと橙子は笑った。


この時の会話がまさか現実のものになるとは、誰が予想するだろうか。


まさかと思ったまま、二ヶ月近く経って、橙子がようやく妊娠に気付いたとき、全身が震え上がる程の恐怖と喜びを同時に感じたものだ。


数週間前から、妙にけだるく、胃がムカムカしていた。


生理が遅れることはよくあることなので、気にも留めなかった。


二日酔いが続き、風邪でも引いたのかもしれないと貴昭にはこぼしていた。


それが、命の芽生えだったとは。


病院に行った帰り、橙子は真っ先に貴昭に電話をした。


「ねえ!私、出来たわ。あなたとの赤ちゃんよ」


「やっぱり…」


貴昭は確かにそう言った。


「今から、部屋に行ってもいい?これからのことを相談したいの」


「今夜は、小屋入りしないといけないから、明日おいで」


橙子は勿論産む気でいた。


この答えで貴昭も受け入れてくれるものだと思っていた。


ついに結婚するのだ。


安定期に入ったら、式を挙げられるだろうか。


いや、そんな贅沢は言わない。


籍を入れて、無事に健康な赤ちゃんが生まれてくれれば、それでいい。


橙子はウキウキしながら、翌日に貴昭の部屋へ向かった。


部屋の前に着くと、ドアが外側に大きく開き、ストッパーがかけられていた。


すぐ脇の窓も半分開いている。


橙子がひょっこりと中を覗くと、がらんどうの部屋の中で管理人さんが掃除をしていたのだった。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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