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* 第十四話 * ~橙子の場合~ ?

橙子はザッとシャワーで汗を流し、出掛ける仕度を始めた。


日焼け止め程度の薄化粧を終え、髪の毛を後ろにひっつめると、マジソンバッグを掴んだ。


履き古し、踵の潰れたキャンバススニーカーを足に引っ掛け、炎天下の中、稽古場に向かう。


電車代が勿体無いので、アパートから稽古場までは自転車だ。


駅3つ分なので、大した距離ではないが、ものの5分で汗だくだった。


9月の下旬に、下北沢のスズナリで芝居を打つ。


今日から、その舞台の為の稽古が始まるのだ。


どんな役がつくのか、そればかりが楽しみだった。


「橙子さん、おはようございまーす」


稽古場に着くと、後輩の女の子が声を掛けてきた。


若い子には負けられない。


看板女優の意地として、橙子はあまり後輩の女優に優しくなかった。


「おい、橙子」


呼ばれた方向を向くと、作・演出の柴田達矢が珍しくもう来ていた。


「あら、柴田、早いじゃない?」


「これ、見てみろよ」


柴田は演劇誌を橙子に差し出した。


「そのスタッフ賞獲った照明って、お前の昔のコレだろ?」


柴田が親指を立てる。


橙子は目を見張った。


大きな演劇賞の受賞の知らせのページの隅に、小さく賞を獲得したスタッフが載っている。


「ああ…」


そこには、紛れもない、彼の名前が掲載されていた。


 ― 谷内貴昭(照明)。


「随分、立派になっちゃったわね」


橙子は苦笑しながら、雑誌を柴田に返した。


「海外行ってたんだな、谷内って」


「そうなのね、知らなかったわ」


今朝の夢見の悪さはこれかと、橙子は感じた。


水のペットボトルのフタをグイとひねった。


「別れてから一度たりとも連絡は来なかったし、…まあ、逃亡したんでしょうけど」


「噂だけどさ」


柴田は一度言葉を切った。


「谷内ってゲイなんだってな」


橙子は飲んでた水を噴出しそうになった。


「…?!」


柴田は雑誌を丸めて、ニヤニヤしていた。


 ― なん…ですって?



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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