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* 第十三話 * ~ななの場合~ ⑤

別の日。


部活が終わって、校門を出たななは曲がり角の向こうに芳野先生を見掛けた気がした。


友達とすぐ別れると、駆け足で芳野先生らしき人物が消えた方向に急ぐ。


角を曲がるとやはり遠くに似た後ろ姿を発見した。


相変わらずのカッチリした服装と背負ったリュックを見て、間違いないと確信した。


今日はななの授業はない。


普段からこの街によくいるのだろうか。


ななは嬉しくなって、後を追った。


追い付くと、ななは芳野先生の前に回り込んで声を掛けた。


「せーんせっ」


「うわっ」


仰け反るほどに驚愕した様子の先生に大受けするなな。


「先生、何やってんの?」


「ななちゃん…、いや、えっと、ちょっ…と向こうの古本屋に寄ってたんだ」


しどろもどろになっている芳野先生にななは思い切って言ってみた。


「駅前のマックで少し話さない?勉強抜きで」


「いやいやいや、もう帰る時間だろ?」


晩秋の今は、もう日が暮れかかっている。


腕時計を見ながら渋る先生の手を取ると、ななは思い切り引っ張る。


「大丈夫だよ。行こ」


時刻はもう六時を回っていたので、家が厳しいななを気遣って芳野先生は電話を入れようと提案した。


「いいってば。テレカ勿体ないよ」


二人は駅前のファーストフード店に入った。


普段、リビングで勉強している時は、必ず母が近くのダイニングキッチンにいるので、込み入った話をしたことがなかった。


ななは、なんだか新鮮で、芳野先生のいろんな事を根掘り葉掘り聞いた。


「彼女はいるのー?」


「うーん、大学でいつも一緒にいる女友達はいるけど、彼女じゃないなぁ」


ずり落ちてきてもいないのに何度も眼鏡を押し上げる芳野先生が可笑しくて、ななはカラカイ半分で茶化した。


「絵を描く時はさ、やっぱり理想の女の子を想像したりして創作するんでしょ」


「え、いやっ…」


今まで以上に動揺した様子に、今度はななが戸惑った。


誕生日に貰ったイラストを思い出す。


なんだか、男の人の性を目の当たりに感じた気がしたのだ。


 ― 先生は、私のこと、好きなのかな?


自意識過剰かもしれない。


だけど、それなら嬉しいと思う。


「先生、私が大人になったら結婚してくれる?」


「はは…、いつの話だよ。その発想がまだ中学生だな」


「だって、来年の今頃はもう16歳だよ?結婚出来ちゃう歳でしょ?」


芳野先生は黙って、残りのコーヒーをすすった。


「そうだね。いい女になってたらね」


「あー、流したなー」


ななは、頬を膨らませた。


「はいはい、結婚、します、します」


芳野先生はトレーを持って立ち上がると言った。


「さ、もう帰らないと」


店を出ると、日はすっかり落ちていた。


先生は、ななの家の方向へ向かって歩き出した。


「あ、いいよ。一人で帰れるから」


「ダメ、家の前までは送ってく」


二人はまるで恋人同士のように、家路を歩いた。


ななは、男の人と並んで、こんなに長い距離を歩くのは初めてで、なんだかドキドキした。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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