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* 第十三話 * ~ななの場合~ ④

「先日は申し訳ありませんでした」


芳野先生は来るなり玄関先で深々と頭を下げた。


母が慌ててとりなす。


「いいのよ、人にはいろんな都合があるものなんだから。どうぞ、お上がりください」


そういいながら、スリッパを差し出した。


ななは、わざと膨れっ面で迎えたが、内心はなんだか泣きそうだった。


用意されたいつもの座椅子に膝を付けると、芳野先生は小脇に抱えていた書類用のホルダーからA4サイズの封筒を取り出した。


「ななちゃん、これ」


渡されたななは促されるままに封を開けた。


「え、何これ」


取り出したのはカラー原稿だった。


ななの中学の制服を着た少女が繊細なタッチで描かれている。


「これ、もしかして…」


芳野先生は、せわしなく眼鏡を指で上げながら、大きく頷いた。


「私…?」


「そう、あんまり似てはいないけど」


とても可愛くて、素敵な色使いの優しいイラストだった。


「ななちゃん、先週、誕生日だったでしょ」


芳野先生が照れ臭そうに笑った。


驚きのあまり、一瞬声が出なくなる。


「こんな気色悪いプレゼントしか思いつかなくて悪いけどさ」


そう言って、自嘲した。


ななは、ふるふると顔を横に振った。


「…ううん、すごいよ。感動…した」


やっとの思いでそう言うと原稿を持って立ち上がった。


「見て!おかあさん、これ、先生が私を描いてくれたのっ」


覗き込んだ母が目を丸くする。


「まあ、あらあら、素敵じゃないの」


「先生っ!私、これ宝物にする」


「額に入れなくちゃだわね」


バタバタと駆け回って喜ぶ親子を芳野先生はホッとした表情で眺めていた。


実は先日、女友達にこの作品を見せたところ、ロリコンだの変態だの散々罵られたのだ。


芳野先生に思いを寄せていたその彼女は、嫉妬に狂い、原稿を破こうとする暴挙に出た。


その騒動の為に、彼の一日のバイト代はふいになったのだった。


「喜んでもらえて嬉しいよ」


芳野先生は、複雑な思いを笑顔の裏に閉じ込めた。


確かに。


女友達が嫉妬するほどに、このイラストには思い入れがあった。


妹のように可愛いなな。


隣にいるだけで抱き締めたくなるなな。


それを恋愛感情だと認めてはいけない。


ななは15歳になったばかりだし、それ以前に生徒である。


この絵を描きながら、勃起していたことは知られてはならないことなのだ。


そんな葛藤を、絵を一目見ただけの女友達に見抜かれてしまったのだから、油断ならない。


なんとしても内に秘めねばならない。


それなのに、このイラストをななに渡したのは、やはり気付いてほしいという煩悩が消せなかったからだ。


果たして、ななには伝わったのだろうか。



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Comment

泉月光詩 | URL | 2008.10.27 14:51
あれから 読んでみました(o^^o)

マンガのプレゼントなんて、感動ですね。

しかし 一瞬 ななの親、うちのおかんか思いました。
まあ 後々 口が閉じなくなる事態が起きたんですが(笑)
まさかの~親の場合~ができそう(笑)

香月 瞬 | URL | 2008.10.27 14:52
■親の場合(爆)

>泉月光詩さん
ありがとです。
自分のだけど、久々に読むななの場合(^o^;
コレややこしい話。
親のあるあるを感じてもらえて嬉しいです。

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香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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