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* 第十三話 * ~ななの場合~ ③

家庭教師がある日は授業が終わったあとに、家族みんなと芳野先生とで夕食を食べて終了という流れが出来上がり、すっかり家族ぐるみの付き合いに発展していた。


父も母も芳野先生にとても好感を抱いている。


一人っ子のななもお兄さんが出来たようで、とても喜んでいる。


2学期が始まって、学力テストや中間テストでなかなかの点数を取れるようになった。


ランキングを一気に上げたななに友人たちも学校の先生もとても驚いていた。


この調子で、期末も、最期の砦である受験も乗り越えられれば、芳野先生サマサマである。


もともとのななの頭脳もあるが、芳野先生の教え方はとても分かりやすい。


漫画家じゃなくて、教師になればいいのにと思うほどだ。


だけど、芳野先生の漫画の腕も相当なもので、ななはいつも感心していた。


それなのに、出版社に持ち込みをしたり、各種コンクールにも応募している結果はあんまり芳しいものではないらしい。


ななは芳野先生の描く物語や絵柄が大好きなのに、その道のプロというのは、やはり難しいものなんだそうだ。


リビングのソファに寝転がっていたななは、ふと時計を見て、17時を回っていることに気付いた。


「おかあさーん、今日、先生遅いねえ」


洗濯物を畳んでいた母が顔を上げた。


「あら、ホントねえ。どうしたのかしら」


「電話してみたらー?」


「ええ?もう家は出てるでしょうよ」


母は、畳んだ洗濯物を抱えて、二階へ上がっていった。


ななは、そわそわして、玄関へ出てみた。


家の前の道に出て、いつもやってくる方向を見てみるが、気配はない。


「はは、何、待ち遠しく思っちゃってんだか」


妙に照れくさくなって家の中に戻った。


勉強時間が少なくなってツイてるな程度に思おうと、もう一度ソファに寝そべった。


が、時計の進みが気になって仕方がない。


気を紛らわす為に、借りていた吉野先生の漫画の原稿をペラペラとめくった。


「うーん、やっぱスゴイ」


 TREEE,TREEE…


「あ、先生かな」


ななは飛び起きて、受話器を取った。


「はい、渡辺です」


電話の主は、やはり芳野先生だった。


気のせいか、声が緊迫している。


「すまん。ちょっと今日は行かれそうにないんだ」


「どうしたのー?」


「うん…、ちょっとトラブって…」


受話器の向こうに、声が聞こえた。


何か、喚いている。


 ― 泣き叫んでいる?


女性の声だった。


「先生、彼女と喧嘩したんじゃないの?」


ななが少し冷たい声で尋ねる。


「いやいやいや、あー、とにかく、ごめん、今日は無理なんだ。ご両親には改めてお詫びします」


そう言ってガチャっと電話は切れた。


ななは、ムっとした。


「おかあさーん、今日、先生来られないってー」


二階に向かって、そう大声を出すと、怒りのせいか語尾が涙声になった。


「?」


なんだか喉が締め付けられるようだ。


芳野先生が来られないだけなのに。


勉強しないで済んでラッキーなはずなのに。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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