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* 第十三話 * ~ななの場合~ ②

芳野先生が、ななの家庭教師になって3週間が過ぎた。


残暑厳しい、8月も半ば。


もう日も暮れ始めているというのに、外では蝉がうるさく鳴いている。






芳野先生は、最初の印象とは違って、意外とよく喋る人物だった。


授業もそこそこ分かりやすく、苦手なところの対策もしっかり立ててくれる。


服もきちんとアイロンがかかったような清潔なものを着用しているし、夏真っ盛りだというのに汗臭くもなかったので、隣に座るのにも嫌な感情はなかった。


ななは、最初に思っていたより話しやすい芳野先生にどんどん慣れていった。


一番の楽しみは、芳野先生が描いている少女漫画を読むことだった。


芳野先生の夢は漫画家になることなんだそうだ。


それが分かってから、毎回、今まで描いた作品を持ってきて、貸してくれる。


そして、ななに感想を求めたり、このシーンの場合の女の子の心情はどうかとかアドバイスを求めてくる。


ななは、それが楽しくてしょうがなかった。


芳野先生もななのちょっと毒の入った感想に一喜一憂しながら、とても楽しんでいるようだった。


「さ、そろそろ休憩でしょ?どうぞ」


母が、冷たいレモンティーを持ってきた。


数学の難問に頭を抱えていたななの表情がパッと明るくなった。


「先生、今日は終わったら、お夕食一緒にいかが?」


夕飯の下ごしらえ中の母が、ダイニングの方から声を掛ける。


「あ、いえ、それは…」


「そうだよ。いつもすぐ帰っちゃうじゃん。これからは食べてから帰りなよ」


ななも母と一緒になって、芳野先生に食事を勧めた。


「うふふ、お部屋で彼女でも待ってらっしゃるのかしら?」


母が冗談を言うと、芳野先生は顔を真っ赤にして否定した。


「いやいやいや、そんなことはないですがっ」


「じゃあ、今日は食べてって。決まり!」


ななは、はしゃいだ。


「んー、じゃあ、お言葉に甘えて…。なんか、あんまり居心地がいいもんだから、入り浸っちゃいそうで、怖いんですよぉ」


芳野先生は、分厚い眼鏡を指であげながら、承諾した。


「わー、嬉しいな」


「はいはい、じゃあ、数学の続きやるよ」


「ほーい」


ななは、すっかり芳野先生に懐いていた。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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