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* 第十二話 * ~茂樹の場合~ ⑦

一週間が過ぎ、僕達は毎晩電話で話し、時々イチャつきながら小さな愛を育んでいました。


単純だと思われるかも知れませんが、妙に仕事も頑張っちゃったりして、次の連休にまた郁美に会えると思うと、ド田舎の勤務も苦になりませんでした。


そんな時、郁美からショートメールが届きました。


余談ですが、この頃、僕はまだIモードを持っていなかったので。


『コンヤハノミニイッテキマス!イクミ』


同僚とでしょうか。


素直に羨ましく思いました。


僕の場合、仕事が終わって飲みに行くのは、大抵、取引先のお客様か支社長、もしくは周りのおばちゃんを始めとする僕を狙う女豹たち。


せっかくお酒を飲んでいても気が抜けないのです。


同世代の男連中と飲みに行けないつまらなさ。


これが僕の頻繁な帰省に拍車をかけていたのですから。


郁美のメールに少しテンションが落ちて、とぼとぼと家路に着きました。


缶ビールを飲みながら、コンビニで買った弁当で、侘しい夕食をとっていると、着信がありました。


郁美です。


もう飲み会が終わったのかなといそいそと電話に出ると、いかにも居酒屋っぽい騒がしい音の中に郁美の声が響きました。


「あ、後藤君?今、まだ飲んでるんだけどね」


ご機嫌な様子がよく分かりました。


「良くしてもらってる先輩にね、彼氏が出来ましたって報告したの。そしたらね、ふふっ」


郁美の後ろに何人かの男女の声が聞こえます。


よく耳をすますと。


 ― 俺たちが見定めてやる。かわれ、かわれ。


僕は信じられない思いでいました。


「どんな彼氏か俺たちが判断してやるって騒いでるの」


郁美はまんざらでもなさそうな感じで言いました。


「電話かわれってうるさいの。ね、いいでしょ?」


僕はカチンときました。


「良くないよ。なんで知らない男と話して、お前の彼氏に相応しいかどうかなんて試されなきゃいけないんだ?」


僕は冷静に話したつもりでしたが、郁美には怒りが伝わったようで、一瞬ひるみました。


「そもそも…」


「もっしもーし」


急に男の声に代わりました。


「郁美ちゃんの彼氏さんですかぁ!」


「…」


「遠距離なんか続くの?郁美ちゃん泣かせたらただじゃおかないぜ」


「はあ」


明らかに酔っ払った男がなんの権限で僕にそんなことを言うのでしょう。


「ご、ごめんっ、携帯奪われちゃって」


郁美が慌てて出ます。


「もう帰るから。帰ったら電話するから、ごめんね」


「いいよ、電話なんかかけてくんなよ。先輩さんとごゆっくり楽しくやってりゃいいだろ」


思わず大人気ない発言をして、通話を切りました。


頭に血が昇って顔が真っ赤になっていました。


こんなにムカついたのは久しぶりでした。


気付いたら、持っていた割り箸が折れていました。


郁美が僕の手の届かない場所で男と一緒によろしくやっているのも気に食わないし、彼らが東京で楽しく飲んでいることも癇に障りました。


すべてにおいて、嫉妬で狂いそうでした。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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