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* 第十二話 * ~茂樹の場合~ ④

あの日は佑介の車で各自の家まで送り届けてもらい、終了しました。


帰ってから、早速郁美から僕に電話があり、年明け早々に二人きりで会うことになりました。


行き先は、彼女が“鬼門”だと言っていた横浜にしたのですが、思わずなるほどと頷いてしまうほどの鬼門っぷりを見せてくれました。


僕の愛車は東北の社宅にあるので、郁美に車を出してもらってのドライブ。


意外なことにマニュアル車だったので、慣れない僕は彼女に運転を任せて、横浜まで向かいました。


中華街で食事をするつもりだったのですが、正月でしたから、どこも混み混み。


覗く店、覗く店、行列です。


散々歩いて、ようやく入れたのは場末の食堂と言った雰囲気の店。


初回のデートにしては、やっちゃったなっていう…。


ま、美味しかったから良しとしましたが。


その後、港の見える丘公園に行き、車を停めるのに坂を登ったのですが、まあ見事に停められるところは他の路駐の車で埋まっていて、仕方がないからちゃんと駐車場に停めようということになりました。


来た方向に戻ろうとした郁美は、そのまま折を見てUターンすればよかったのに、何故か左に曲がり、細い私道に入り込みました。


思いっきり一方通行の下り坂。


先はどうやら行き止まり。


バックで戻るも、乗っている車はマニュアル車なもんだから、焦ってしまってエンストしまくり。


そのまま前に滑って行ってしまう車。


助手席の僕は冷や汗モノ。


郁美も真っ赤になって、一生懸命落ち着こうと深呼吸している。


ものの何分かだったと思いますが、とてつもなく長い時間でした。


郁美はもっと長く感じていたことでしょう。


どうにかこうにか元に戻って、仕方がないから先に進んで、グルリと遠回り。


「ほらねー、だから横浜嫌いなのよー」


「それって横浜関係あるの?」


ニヤニヤと意地悪な突っ込みをしながら、でも僕はそんな失敗をした郁美を可愛いなと思っていました。


僕はもう明日には新幹線に乗らなければいけません。


付き合って欲しいと言うには、ハードルが高すぎました。


それに、すごく汚い考えですが、生保会社って、女性が多い職場なのです。


支社に戻ったら、正直なところ、女性には不便しません。


ここで、特定の彼女を作って、気持ち的に縛られるのも損かなとも思ったのです。


だから、ここで決断を下すのは早いと思い、僕は決定的なことは一切言いませんでした。


しばらく港の見える丘公園のベンチに座りながら、ようやく切り出したのは郁美の方でした。


「私さ、後藤君のこと好きになってもいいのかな」


座っている僕と郁美の間には拳一個分の隙間がありました。


「もう会えなくなっちゃうと思うと、結構切なかったりするんだよね、私」


そう言って、郁美は僕の方を見ました。


「うん…。でも、またすぐこっち来るよ。成人の日絡みの連休の時にでも…」


「また会ってくれるの?」


「もちろん」


そう答えて、僕は、郁美をキープしたのです。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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