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* 第一話 * ~珠子の場合~ ①

バスから、一歩降りた瞬間、突風に砂埃が舞った。

大量に散ってしまった桜の花びらが、低い位置で灰色の渦を巻いて去っていった。 

長い髪が顔にはり付いて不快だ。 

雨宮珠子は砂が入らないよう唇をかたく結び、大きな目を細めながら、風の抵抗に向かって歩いた。 

歩行者用の信号が点滅していた。 

そのまま走って横断歩道を渡ってしまおうかと一瞬頭をよぎったが、思い直して足を止める。 

今、降りたばかりのバスが目の前を走り過ぎて行った。 

珠子は、ふと肩に掛けたバッグの中を覗き込む。 

ようやく書き終えた用紙を封に入れて、文庫本に挟んである。 

大事なものなのに。 

珠子は、苦笑を隠すように深いため息をついた。 

と同時に、珠子の身体は風によろけ、二、三歩後ろに下がった。 

「あ…」 

思わず、小さく声に出た。 

 ―― あの日と似ている。 

そう思って、後ろを振り返った。

 

あの日は、振り向いた先にアイツがいた。 

「おはよう」 

初めて言葉を交わした。 

そう、あの瞬間から、珠子の人生が動き出したのだ。 

忘れるものか。 

信号は、すでに青に変わっていた。

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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